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暗黒定数式:エピタフ・コンプレックス 肉が足りない……

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていたボレロ村上さんの作品です。

死者の人格をソフトウェアとして再現する《墓地》サービスが存在するというSF作品。

さくっとした話の軸となるガジェット『エピタフ』の説明と、世界観の技術的背景が説明されたので、すっと入り込めました。

『エピタフ』の死者の高精度な、所謂ボット化するという発想は面白かったです。
ただ、世界情勢の話が出てくるのに対して、現実の話が少な過ぎて生活感が無い? 無機質――というよりも、『死の受容』に到達した人間達しか浮かび上がってこない感じです。

ストーンメイソンの件からのエピタフの説明については、仕組み的な話をするのはいいのだけれど、物語に必要な箇所が専門用語に埋もれてしまっている様なきらいがあるのが残念。ガジェットの技術的側面が多過ぎて、小説という形態を取る必要が無い部分な気も。

解る人には解るという意味では、良くも悪くも読者を作者側から選んでいる感じ?

端折るべき場所と記述すべき場所のバランスが悪いって感じですかね……。
ザ・ミリオンと死者の実演の表現という意味なら解るけど……後編にザ・ミリオンは出てくるのかしらん?
ザ・ミリオンまでの流れと、仕組まれたプロモーション的な演出は、実に人間の人間性に対して、じわりと踏み込んではいけない暗い領域に立ち入った様な気持ち悪さがあって良かったです。
あと、世界を技術的抑圧している倫理クローラみたいのも好き。ディストピア、とは言わないし、世界が不幸な訳では(多分)無いのだろうけど、発達した科学の中で言語化されず、明確にアジられたりしていない様な鬱屈とした人間の基礎への黙殺されたテーゼとかが、もうあるんだぜ? っての良いです。良い。

前編、という形式に対して言うならば、主題に対して説明が長く、理屈だけに終始してしまったのが残念。
物語と論理が分離していたので、主要な場面となっていたエピタフについての説明シーンでは、対話として疑問を掘り下げて行くシーンとして設けられた方が面白かったかも。

物語として意義があるかというと、エピタフの概要は前シーンで描写済みなので不要で、その人間の死生観、或いは個人の延長は何処までなのか? という様な技術的意義を掘り下げたのならばまだしも、ただ論理説明だけに留まっていたので、センテンス、下手したらパラグラフごと要らなかったでは? って感じに。
個人的には、技術の理屈も好きだけれども、それに加えて形而上への踏み込みがあるのが好きなので、その辺がどうしても口惜しい。

多分、ザ・ミリオンまでの流れの為にあったのかと思うのだけれども、それにしても長過ぎた……。

っていうか前後編だと思って無かったから読後感が!が!!


こりゃ後編待つしか無いですネ。

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Liminality 青春に殺される……

『梟流』の小鳥遊さんとこの作品です。
 
青春怪談という感じで、主に『視える』体質の〝私〟と、怪談が大好きな『先生』の二人で遣り取りをする短編集。
 って訳で、短編集なので、ざっくり一話ずつ感想ってかメモってか、何でしょうね、これ。

 以下です。

・魚の話
 一話目なので、どんなものかという感じで臨んだこの話。
 零話的位置付けの『回想』があったけれども、あれは私的には物語の下敷きというか下書き的なものだと思ったので、そこは割愛です。
 怪談短編という形式のお話で、先生と、〝私〟或いは〝さっちゃん〟の雑談が好印象。

この子絶対笑顔とか隠そうとしても堪え切れてないよね?

 本筋である〝魚〟までの話と、その祓いまでもテンポが良く、怪異としての気味の悪さもしっかりしていましたが、ただ一つ欲を言うならば、もう少し怪異と現実の前後に情景描写が多く欲しかった感じです。
 うだる様な夏の暑さの中で、突然に腐り掛けの温い水が溜まった水槽に放り込まれる様な肌と鼻で感じる気持ち悪さの助長。そんな描写が欲しかったかも?


・青春雑音
 ちょっと落ちが弱め?
 掌編だとは思っていなかったので、突然終わった感じに。もう少しDVD視聴を長くして、落ちへの伏線を忍ばせても良かったかも知れません。
 先生が電源ケーブルを引っこ抜いたのと、その後の言動が少しちぐはぐに感じたので、視聴中は先生は退席させておいても良かったのかな? 〝私〟が一人で映像に呑まれそうになった非現実感のタイミングで、先生がその境界からケーブル引っこ抜いて連れ戻す……とかかしらん?

 あと金曜ロードショーは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』かと思った。


・理由並列
 クソッ! イチャついてるだけじゃねぇかこいつら!!


・殺意乱数
 今のところ、収録作品の中で一番好み。
 平然と日常が怪異に侵蝕されていて、それに気付くまでは普通なままで、発覚と同時に裏返るのがとても良いです。
 ある意味で露骨な違和感も、先生のキャラクター性に取り敢えず押し込めておいたのもバランスが良くて、『何か変な気がするが、まあいっか』扱いで読み進められたから、あとでそれが効果的でした。しれっとした瞳の色とか。
 落ちの方も、怪談として尾を引く様に、すとんと綺麗に落とさなかったのが読後感が色濃く残って楽しめました。

 ただ、どの辺りを乱数と解釈すればいいか明確には判らんかったんでごわす。


・幽霊の話
 先生が語り部になって真っ先にこいつ先生じゃないんじゃね? と疑って済みませんでした。
 こんな物好き先生しか居ません。

 話としては、語りと題からの意味を転調が良かったです。上手い引っくり返し。
 子供と大人の立場の違いから来る過去の行動内容の、その重さによって『幽霊』の意味合いの比重が一気に変わって重くなる点が面白かった。
 ただ、怪談の類とするには、読後感が期待していたものとは違って、しめやか過ぎた感じでした。同じ湿り気でも、もっとじめじめした重さになるかと思っていました。
 担任のサイコパシーな暗い潜熱? そんな感じのものがあれば、より好みでした。……俺の性格の問題か。


・創嫉残響
 推理というギミックがありましたが、ちょっと論理が弱めでした。
 『大気怪談』そのものが認知されていたかが曖昧になってしまっているので、先生が『大気怪談』を見つけたというのも、それなりの流行があったからこそかなぁ、とう感じになってしまったので、せめて〝私〟が少し聞いた事があるとかなら、補強出来たかしら? という感じです。
 文芸部室との距離も、大気像への話をしているのが聞こえるくらいに近い距離ならば、恐らく怪談を語りに行くには人目に付く場所になってしまう為、怪談が明らかに機能しないだろうという点、他の部員からも聞こえるという事は部員伝いに西山さんに気付かれる可能性は十二分にあるという点で、ちょっと矛盾しているな、と。
 そう言う違和感がある条件下で、先生が犯人に思い至るのかしらん? という様な感じです。

 まぁ、その辺りは措いておいて。
 怪談としての気味の悪さは、とても良かったです。本文では明確には語られませんでしたが、何だか西山さんが超怖い人に
 作品の構想の先行提示者がどちらだったかというのは、個人的には西山さんが後だと、Aが自分が先に示した構想を、非の打ち所の無いレベルの作品として提出された事になってまるでどう仕様も無い程に打ちのめされた事になるので、『大気怪談』に込められたモノが途轍も無く怨念染みて重くなるので、そっちがいい(小並感)。
 A……可哀想な子……。
 西山さんは西山さんで、ハイスペック過ぎる。怖い。西山さん自体が怪談でいいよもう。


・夕日証明
 クソッ! イチャついてるだけじゃねぇかこいつら!!(2回目)
 淡々とした、〝私〟の兄についての話でしたが、ひたすら〝私〟が可愛い話でした。
 お兄さんシスコンとかじゃないよね?

・映るものの話
 クソッ! イチャついてるだけじゃ(ry
 最後に収録されていた話ですが、何か収録されている作品が後に行くにつれて、〝私〟が可愛い。先生は朴念仁なのか、それとも確信犯なのか……
 何にしろ、〝私〟は先生の事が大好き過ぎ。いいぞもっとやれ。
 そして、怪異を目前にしているのに、平然としている二人の遣り取りが何だかシュールで笑えるという。こういう、異常に対しても普段と変わらない様子でいるのは好きですな。


 全体的に、思ったよりも怪異の話が少なかった印象でした。
 今後、この世界観の続きがあるなら、一度、長編……とは言いませんが、もう少し長い話を読みたいですね。
 主に〝私〟が怪異に巻き込まれまくって碌でもない目に遭う様な話とか。

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流れ星を、一つだけ。 叙述トリックにちょっと疑問。

 カスカナヒカリさんのところの『流れ星を、一つだけ。』の感想です。

 メインである『流れ星を、一つだけ。』と、他に数編のお話が載っている短編集。実は読了したのは大分前なので、結構記憶が曖昧になっていたりします。本を片手に細かい内容を思い出しつつ書く試みはしていますが、割とぐだぐだになってしまいそうな。

 カメラマンの『僕』とその彼女のお話なのですが、事故に遭って学生時代の記憶を失った彼女との過去を、文字通り巡ります。
 二人の関係の契機にする為に学生時代を過ごした故郷に向かって、現在と僕と彼女の過去を繰り返しながら話は進んでいき、その中で少しずつ色々な事が明らかになります。
 物語全体としては、過去について多くを語らずに故郷の訪れた場所毎に思い出していく語り部である『僕』が、彼女の記憶に疑問を持つのは面白いお話でした。
 失った部分を埋める様に過去と今が決定的に繋がる場所まで、時間軸が進んでいくので読んでいる側としては、この後に何が起きるのかを期待しつつ読み進められました。

 ただ、読み終えた後がなぁ……。

 記事タイトルにもある通り、ある叙述トリックが仕掛けてあるのですが、その方法が少し疑問を抱くものだったので、何とも言えない感が。「えー、それはちょっとどうなの?」というのが最後まで拭い切れなかったので、別の手法でよかったか、もしくは最初から仕掛けなくてよかったんじゃないかなぁ、と。

 一応以下反転。
 彼女は現在では『僕』こと里村真の事を『サト君』と読んでいて、回想には彼女に『シン君』と呼ばれる登場人物が出てきます。本編では叙述トリックが明かされるまでフルネームは一切出て来ず、その為に、一見すると『僕』である里村真が『サト君』である様です。
 まぁ、当然ながらそれは違っていて、里村真の『真』から彼女は実際には彼を『シン君』と呼んでいて、もう一人の登場人物――真藤郷が『サト君』であった、という具合です。
 それだけなら叙述モノとしては過去と現在を混ぜる遣り方ですので、普通に面白い、話の要とする事が出来るのですが、問題は人称です。
 過去の話もまた一人称で展開されるのですが、その為にか、俺がミステリ脳のせいというか何と言うか、一応小説には『地の文では嘘を吐いてはいけない』と言う様なルール的なものがあるんですね。
 それを踏まえた上で読んでいると、途中の彼女が記憶を失い高校時代の記憶を失うシーンがあります(この記憶喪失も実際は彼女の狂言だったという事が、後で話の終盤に色々と絡む訳ですが)。そこで、実際に彼女と付き合っていた真藤が交通事故で死に、『シン君』は記憶を失っている彼女に対して『サト君』として振る舞う様になるのですが……

 ただ一つ憶えていたのは、サト君という僕の呼び名だけだった。

 という一文がシン君の視点で語られる為に、まぁ当たり前ですが読んでいる側は騙されますよねー、という。ですが、この一文は地の文でしかも一人称なので、怪訝しい事になってしまって、何か反則気味だなぁ、ともやもやを感じる事に。もしも書くなら、

 ただ一つ憶えていたのは、サト君という僕には馴染み深い綽名だけだった。

 とかかな。
 いやまぁ、そんな細かい事は殆どはいいんだよとなるかも知れませんが。


 そんな訳で、何かとても設定は面白いのに読了感が不完全燃焼になってしまいました。
 本の裏側に書いてある『さぁ、ここから始めよう 君が未来に進む為に 僕が過去の町を辿ろう』という文句も、上に書いた事さえなければ物凄く作品として噛み合っていて、落ちもタイトルも含めていいものだったんですが……問題に感じた部分は人の裁量よっては全然違う意見や読み取り方になるかも知れないので、一概に言える事ではないとは思います。

 でも何か、こう、納得出来ない感。

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Timer オムニバスギミックで±0な感じ

 今回はカスカナヒカリさんとこの『Timer』の感想なのよー。

 短編集で、秀逸なデザインの本。マジでここの本の装丁素敵。俺もこんなお洒落なセンス欲しいわ畜生。

 で、この本は人×時間というテーマで四編収録されています。タイトルにオムニバスと書きましたが、ギミック的な繋がりがあるので独立短編という意味では少し違うかも知れません。まぁ、でも俺が読んだ感じでは一話ずつ単独で簡潔している様に思えたのでオムニバスって表現が正しいかと。

 各話の概要はカスカナヒカリさんのとこに紹介ページがあるので、そちらをどぞ。
 それぞれ年月日時秒数と言った時間をテーマにしたお話になっていて、色んな立ち位置の主人公の境遇を、どちらかと言えばジュブナイル風に描いています。ジュブナイルという言葉がキャラクターの年齢層を指すのか、読者層を指すのか俺の知識だと曖昧なのですが、雰囲気だよ雰囲気。

 それぞれの時間のテーマを扱って色々なお話を組み立てていて、それをオムニバスにしている中で、少しだけ繋がっているというのは時間というものを取り上げる中で面白い感じがしましたし、長いのから短いのまで上手く時間を描いているのは面白かったです。
 特に好みだったのは[case.3]の『three days.』。何処と無く鬱屈としつつ、だらだらとした派遣バイトをしている主人公が、ひょんとした青春少女に会って自分もいっちょやってみるか的なのがベタだけど好き。まぁ、それと屋上ギターって絵面が非常に良かった。下手糞だけど独りで必死ってのが青春っぽいよね。俺知らないけど。

 ですが、残念だったのはそれぞれの主人公の書き分けが微妙だったとこですかね。性別も立場も違うのに、何と無く地の文の一人称が皆同じ人の語り口になっている気がして。キャラクター造形という意味での描写力不足ではなく、心情という意味での人物に違いが無い様で、ベクトルが同じ方向だった気がします。
 それが狙いであったのならいいのですが、どうもそんな必要性は無かったと思うので、単純に書き分け不足かなー、と。違うお話ながら、基礎が同じ人間の違う姿を見ているだけの様な気分に。[case.4]は例外ではありますが、本の大体を占める他の三編がそういう傾向だったので物語に少し飽きが見えました。

 そう言う事で、物語の構成とオムニバスの点とで相殺し合ってる形になってしまったのが残念。飽くまで俺の主観なので、他の人が読んだらどう感じるかは判らんのですがー。

 本のテーマと内容はよく出来ている分、各話の人物の語りが平坦になっている様な感覚も相対的に見えたのかしらん?

 ……あれ、何かほぼ主観的にしか感想言ってねぇ。

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日常シーケンス “⇒非日常”っていう片道切符的な

 祝! 矛盾でふらぐ。一周年記念!!


 (笑)



 カスカナヒカリさんの『日常シーケンス』の感想です。別に特別な事はしません。ほら、普通って素晴らしいですしね?

 中身はさっぱり(皮ごと食った)柑橘類的な短編で、お洒落な装丁の本。というか、全体的にここの本は何か皆デザインがいいのです。
 サイトのデザインも凝ってますから、ちょっと覗きに行くだけでもどうぞとオススメる。

 彼氏彼女達のぼんやりとした目に見えない日常に、ウィルス性の非日常が感染したって感じですかね、ざっとした内容は。
 メインキャラはケイとショウコとリョウ(ケイの弟)の三人なのですが、どの人物が特別主人公という訳でもなし、強いて言うなら文量を多く取っていたショウコが目立っているという印象を受けます。
 まぁ、作中でケイが言っている様に『彼女の物語は既に終わってしまった』という一文がある様に、そういう面で見ると、この作品内でザッピングが起きる度に誰が主役とかいうのは余り関係無くなっているかなと考えながら読んでいました。

 物語の背景は序盤では見えないのですが、ちゃんと骨子となる部分は点々と描写がしてあって、登場人物達から何処と無く感じられる遣る瀬無さとその逆は、茫漠とした話の流れが終わりに近付いた時にはっきりとした形を持って、こういう話の構成は好きですな。

 ただ、タイミングの問題として、ショウコ分が多く取られていて、そしてその虚無的な視点のバランスが悪かった様な気も。もう少し手前で、背景の核となる一月症についてを書いてしまっても良かったかも知れません。
 流れとしては確かに正しいと思うのですが、終盤のショウコの描写を考えると、もうちょい先に出して、一月症というインパクトを与えてから何事も無い様な顔をしたショウコを描いて、虚無ってるショウコの理由に繋げると、もっと効いてくるかと思いました。

 物語として、一つの要素で全体が浮き上がってくる様な構成は好きだったのですが、それだけだとどうしても暫く続く平坦さに冗長さが隠せないかな、って感じですね、まとめると。

 クローバーについては、偶然知っていたせいで何とも言えず……。あとはー、ふと思ったのは一月症でもっと国内外で混乱招いたりしなかったのかなー、とか、その辺りの描写ですかね。どうやって国が回ってるんだろうとか、作中の視点が登場人物の日常の切り抜きだったので、全部が判る訳じゃなかったのがプラスなのかマイナスなのか……移入という点ではプラスかも知れないし、雰囲気という点ではマイナスに働いてしまうのかしらん……難しいとこっすね。

 そんなこんなで、こっそり ■Link にカスカナヒカリさんを追加しておく、と。

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