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流れ星を、一つだけ。 叙述トリックにちょっと疑問。

 カスカナヒカリさんのところの『流れ星を、一つだけ。』の感想です。

 メインである『流れ星を、一つだけ。』と、他に数編のお話が載っている短編集。実は読了したのは大分前なので、結構記憶が曖昧になっていたりします。本を片手に細かい内容を思い出しつつ書く試みはしていますが、割とぐだぐだになってしまいそうな。

 カメラマンの『僕』とその彼女のお話なのですが、事故に遭って学生時代の記憶を失った彼女との過去を、文字通り巡ります。
 二人の関係の契機にする為に学生時代を過ごした故郷に向かって、現在と僕と彼女の過去を繰り返しながら話は進んでいき、その中で少しずつ色々な事が明らかになります。
 物語全体としては、過去について多くを語らずに故郷の訪れた場所毎に思い出していく語り部である『僕』が、彼女の記憶に疑問を持つのは面白いお話でした。
 失った部分を埋める様に過去と今が決定的に繋がる場所まで、時間軸が進んでいくので読んでいる側としては、この後に何が起きるのかを期待しつつ読み進められました。

 ただ、読み終えた後がなぁ……。

 記事タイトルにもある通り、ある叙述トリックが仕掛けてあるのですが、その方法が少し疑問を抱くものだったので、何とも言えない感が。「えー、それはちょっとどうなの?」というのが最後まで拭い切れなかったので、別の手法でよかったか、もしくは最初から仕掛けなくてよかったんじゃないかなぁ、と。

 一応以下反転。
 彼女は現在では『僕』こと里村真の事を『サト君』と読んでいて、回想には彼女に『シン君』と呼ばれる登場人物が出てきます。本編では叙述トリックが明かされるまでフルネームは一切出て来ず、その為に、一見すると『僕』である里村真が『サト君』である様です。
 まぁ、当然ながらそれは違っていて、里村真の『真』から彼女は実際には彼を『シン君』と呼んでいて、もう一人の登場人物――真藤郷が『サト君』であった、という具合です。
 それだけなら叙述モノとしては過去と現在を混ぜる遣り方ですので、普通に面白い、話の要とする事が出来るのですが、問題は人称です。
 過去の話もまた一人称で展開されるのですが、その為にか、俺がミステリ脳のせいというか何と言うか、一応小説には『地の文では嘘を吐いてはいけない』と言う様なルール的なものがあるんですね。
 それを踏まえた上で読んでいると、途中の彼女が記憶を失い高校時代の記憶を失うシーンがあります(この記憶喪失も実際は彼女の狂言だったという事が、後で話の終盤に色々と絡む訳ですが)。そこで、実際に彼女と付き合っていた真藤が交通事故で死に、『シン君』は記憶を失っている彼女に対して『サト君』として振る舞う様になるのですが……

 ただ一つ憶えていたのは、サト君という僕の呼び名だけだった。

 という一文がシン君の視点で語られる為に、まぁ当たり前ですが読んでいる側は騙されますよねー、という。ですが、この一文は地の文でしかも一人称なので、怪訝しい事になってしまって、何か反則気味だなぁ、ともやもやを感じる事に。もしも書くなら、

 ただ一つ憶えていたのは、サト君という僕には馴染み深い綽名だけだった。

 とかかな。
 いやまぁ、そんな細かい事は殆どはいいんだよとなるかも知れませんが。


 そんな訳で、何かとても設定は面白いのに読了感が不完全燃焼になってしまいました。
 本の裏側に書いてある『さぁ、ここから始めよう 君が未来に進む為に 僕が過去の町を辿ろう』という文句も、上に書いた事さえなければ物凄く作品として噛み合っていて、落ちもタイトルも含めていいものだったんですが……問題に感じた部分は人の裁量よっては全然違う意見や読み取り方になるかも知れないので、一概に言える事ではないとは思います。

 でも何か、こう、納得出来ない感。

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