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暗黒定数式:Sophiya's Last Theorem 世界観と物語がミスマッチに感じた

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていたパスベルスさんの作品です。

『フェルマーの最終定理』をオマージュしたタイトル。ラストも、フェルマーの「余白が狭過ぎる」のパロディーかしらん?

前回の『λ ABSTRACTION』と同じく、λ抽象学院の女子生徒達のお話です。
ざっくりと話の流れを言うと、主人公であるアリスの寮室にあるサーバがサイバーテロの踏み台にされたっぽいから、同じ寮生であるソフィーヤ、古園井と犯人を突き止めよう、というものです。

そのサイバーテロは、量子コンピュータでは容易に突破出来るが、古典的なノイマン型コンピュータじゃ計算時間が掛かり過ぎて暗号解読が無理というRSA暗号に対して、量子コンピュータでも計算時間的に解読無理という事で普及しているというGGH暗号が突破されたというのが要点になっています。

で、まぁ犯人はソフィーヤなんですけどね?

前作とは違って、用語やガジェットの説明がきちんとされていたので、読み易かったです。
ただ、文章中で(最早これは俺の好みの問題だけど)半角英数字が出てくるのが、やっぱりリズムが悪く感じてしまいました。

アリスをちょうど『探偵役』の様にした一人称視点で物語は進みます。
その途中で、ソフィーヤを天才として持ち上げようしているけれども、そもそもλ抽象学院自体が、名門中の名門校という説明だった筈なので、何か暗号化方式の基本的な理論説明だけでは、今ひとつ凄さが伝わりませんでした。逆に、主人公のアリスがただ不勉強なだけでは? という印象に。
もっと別に天才度合が伝わる様なものを簡単に表現してしまっても良かったかも知れません。単純に学年トップの成績だとか、色んなアルゴリズムコンテストの受賞常連だとか、そんな感じで。

GGH暗号を突破したソフィーヤが暗号に詳しい事を描こうとしていたのかしらん……?

SFとしては、近未来を描いているというよりも、現代の視点で未来を説明している感じになっているのが多少気になったところです。
量子コンピュータの市販化による情報工学技術の歴史的な変遷の設定が余り詰められていない様に感じられました。
もしくは、量子コンピュータ自体は市販されているけれども、まだ一般には普及していないとか、技術的にまだ過去のものが十二分に実用に耐えている理由が欲しかったところ(何しろ時代設定が『2045年』な訳だし)。
っていうか、ムーアの法則的には2045年のCPUって、まだ256bitぐらいだっけ……?

全体的に、作品から読み取れる世界観設定に対して、SF的な仮想科学感が物足りなく感じました。
暗号化の対象となる通信情報にしても、量子コンピュータの実用化がされている時代で、量子通信について言及されないで、TCPだけの話になっているのも気になります。
読んでいて、無理に近未来の時代背景を設定する必要は無かったんじゃないかなぁ、とか思ってしまいました。寧ろ、近未来になっているせいで、作中の世界観の技術が余り現代と変わらないのが物凄く違和感として残ってしまったところ。

情報工学系女子の日常としては、とても面白いし、キャラ付けもしっかりされているので、普通に現代を舞台にした最先端の特殊な情報工学専門学校とかでも良かった様な気もします。

あと、全体的に技術説明がwikiでも読んでいるかの様で冗長でした。もっと簡易的ですっきりした説明でも良かった気が。TCPパケット構造上の制御フラグの説明とか、丸々要らなかった気がします。
CUI系の操作の描写も、一々詳細を説明しないで、やる事だけを描写した方が読み易かった様に思います。説明の為に話が中断されるので、読んでいる側としてはテンポが悪く感じてしまいました。

最終的に、暗号化による完璧な秘匿通信の不可能性への言及がされていて、インターネットの通信を完全にオープン化すべきと言う思想について、ソフィーヤが話すのは面白かったです。
ただ、そこに至るまでの論点が技術的な視野しか無く、社会的影響を鑑みていないのが、狭窄的で気になりました。何故、ソフィーヤがそんな事を思い付いたのか、全く説明されないまま突然に犯行動機を話したので、もう少しその辺も描写して欲しかった。

アリスが、犯人がソフィーヤである事を理詰めしていく描写も不要だった様にも思います。
ミステリで言うとフーダニット的にしていたけれども、物語の性質的にはホワイダニットにすべきだったと思いました。その方が、動機についての掘り下げも出来ただろうし、ソフィーヤの動機の突然さも無くす事が出来たと思います。

あと、ソフィーヤがどう考えても発信地が露呈する様な方法で犯行を実行したのが謎でした。
本気だったなら、それこそネカフェなり何なりの公共施設から同時多発的に仕掛ける事も出来ただろうし、天才と説明されているキャラの割には少々お粗末な気も。
その辺で、ソフィーヤが犯行を本気で行っているのか否かが、よく判らない感じになっていました。

ソフィーヤとアリスの視点をザッピングさせて描写する、とかでも良かった様な気もします。
犯人と探偵役、みたいな感じで互いの心境を語らせながら話を進めれば、二人の仲についても、もっと語れたんじゃないかなぁ、と勿体無く思う。
前述する犯行動機についても、ソフィーヤは「アリスだから」という理由で話していますし、二人の仲の良さについて人間関係をこの作品単体で読み取れなかったのが残念。

全体的に作中で語られていないバックグラウンドが多そうだったので、専門用語の説明をもっと簡便にして省いて、そこに注力して欲しかったです。
あと百合っぽさがね、もうちょっとね、露骨にあざとくても良かった様な気もする。

それと、古園井ちゃん空気過ぎるよ……。

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