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暗黒定数式:ふたりのハードプロブレム 主題の揺らぎが勿体無い

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていた南正太郎さんの作品です。

アンドロイドが実用段階にある近未来もので、主人公の希海が記憶喪失のアンドロイドの少女と出会い、物語が展開されるというお話。多分、ジャンル的には百合成分も配合。

序盤、一人称視点でのキャラクター付けでも無いのに、妙に物理法則で然程重要でも複雑でもない描写をしているのがちょっと気になって、入り込み難かったです。
物語上で必要な科学的な作用同士のぶつかり合い(例えば技術物とか)とか、視点主のキャラクターの性格から来るなら解るけれども、突然の物理法則の説明はちょっと冗長に感じてしまいました。

ガジェットとしては、限り無く人間に近いアンドロイドと、タイトルでも意識されているであろう『意識のハード・プロブレム』が据えられています。

全体的な感想としては、アイデアが上手く混ざり合っていない印象でした。

一番最初に、主人公である希海が記憶喪失のアンドロイドの少女・ハルカ(後にリコに改名)と出会うのですが、その辺の事情について色々と疑問点が。

作中に登場するアンドロイドは、人工知能としての精神構造を量子もつれを利用しているという事で、その量子状態の安定化の為に冷媒が必要、というものです。
ただ、ここで思ったのがアンドロイドの少女が幾ら実証機の意味合いが強いとは説明されていても、記憶媒体のバックアップ機構は作られているべきなのかなぁ、と。普通なら情報としての重要性から、冗長化されて然るべき部分なので、且つ量子もつれの安定化が内部で恒常化されていないのであれば、殊更に。一度異常系シーケンスが走ったら復旧不可能というのはちょっと気になってしまいました。
まあ、この辺はあとから物語に関わるのかしらん?

記憶を失って彷徨っていたリコを、希海は何やかんやで取り敢えず自分の家に連れ帰って、その後に製造会社の東という男が当然ながら探しに来るのですが、その後にリコ(ハルカ)についての事情を事細かに説明し始めたが不自然に感じたのですが、何か逆に東が胡散臭過ぎてもう少し何かしらの事情があるのかなぁ、と。

アンドロイドの運用方法・社会的な影響についても、地の文での企業側の倫理規定に関する説明がされたのですが、法律が整えられて然るべきだし、企業側もそれなりの犯罪利用への防止措置を取るべきものだと思うので、設定に詰めの甘さが感じられました。
個体製造番号での管理や、企業側でデータベース化して機体毎の状態を把握出来ていない状態があるというのは何かとても気になった……余り本筋には関係なさそうでしたし、物語の核心に絶対必要という風には感じなかったので、さらっと流す程度で良かったのかなぁ……この辺りの設定がそこまで作り込まれていない様に感じたので。

しかし元々、廃棄が決定していた商品であるリコ(ハルカ)を、一社員の独断で希海に渡す理由が解らない……余りにも矛盾している気がしてしまいました。そもそも、廃棄されたとは言え、しかも記憶の復旧の可能性にまで言及しているのならば、それこそ前述の倫理規定に引っ掛かって廃棄されるべきになるのでは……いっその事、貴重なケースの研究・検査としてハルカと自然な生活をして欲しいという方が良かったのですが(作中ではあとで口裏合わせという理由でそんな感じの言い訳にしていましたが、普通にそっちの理由で東に語らせている方が自然に感じられたと思う)、流れを誘導している東に何か狙いがあるかどうかが気になるところ。
情だけでは余りにも理由が弱いし、そこまでアンドロイドに対して思い入れがある程の人間性がこの時点で東には見えないって事でやべぇ東の胡散臭さ半端ねぇ

希海がリコを引き取る事に決めた後の日常シーンは、大体、「オッケーなんかもうイチャついてろよお前ら!!」って感じで百合百合(日本語になっていない)。

あとのシーンでリコの定期メンテって事で、企業側に訪れるのですが、そこで突然現れたルーミングというガジェット。
簡単に言うと、自分の精神の中に引き籠って現実に戻ってこない患者に対して、相手の精神の中に潜って連れ戻す、というもの。

ちょっと、ここが突然過ぎて吃驚しました。希海が専門家の代わりに処置を施すという流れはちょっと無理があるかなぁ……免許を持っているからと言って、企業的に部外者に処置を許す訳が無いし、剰え学生でしかも本職じゃない相手の言い出した事を許可していいものなのだろうか……。

あと、SFとしてはルーミングの免許の更新制度とかまで言及して掘り下げると、希海のメンタル設定背景的に免許失効していないのかが割と謎です。

台風で専門家の医師が遅れているというのも、理由付けにはちょっと弱く感じました。緊急に処置が必要だったなら、台風を予測して企業として何らかの対策を立てているべきだし、症例としてニューロワーム感染が普通にあり得る事なら(東の反応からすると普通っぽい?)常駐している専門家がいる筈……もしくは、処置方法が人間と同じなら、そもそも企業に運ばずに専門の病院に運ぶべきなのではないのかなぁ? と違和感を感じてしまいました。

それと、ルーミングでいきなり精神空間でのバトルがさらりと始まったりして、何か色々詰め込み過ぎな気がしました。タイトルに対して描かれている内容が、テーマと結び付き難いし、迂遠過ぎる。
今のところ、前編だけを読んだ感じでは、『意識のハード・プロブレム』をテーマの中核に据えつつ、単純に人×アンドロイドの百合SFにするか、ルーミングだけのどちらかに絞るべきだけだったかなという感じ。
個々のアイデアとしては面白いし、読んでいて色々と書こうとしているものがあるのは伝わってきたので、問題としては物語全体でのアイデアを埋め込む配分が悪かった印象。

後編でリコがニューロワームに感染しちゃったりする展開への布石かしらん?


そこで希海がリコにルーミングしたら完全にイケメンだな。って言うか作中通して全体的に結構メンタル強いじゃねぇかお前!!

こちらも前後編に別れているとは思わなかったので、後編待ちです。

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