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暗黒定数式:迷い込んだ世界 ちょっと物足りなさ感

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていた南山まさかずさんの作品です。

タイムトラベルもの。と見せ掛けた多元宇宙移動もの。
導入で、ある程度の視点主の存在を仄めかしていてたので、視点のザッピングも特に気にせずに読み進める事が出来ました。

全体的に、さくさく読める文体で読み易かったです。

2012年から2533年に偶発的に時空間移動をしてしまったという裕也君を中心に、物語が展開するのですが、2533年には宇宙人が居たり、肉体改造済みの超人が居たり、人体量子コンピュータが実用化されていたり、ハイパービルディングを余裕で超えて成層圏すれすれの建築物があったりと、ぶっ飛んだ時代になっています。

上記の様に、設定はSFとして色々なものがちりばめられているのですが、個人的にはもうちょっと、個々の要素の全景についての描写が欲しかったところ。

タイムトラベルと見せ掛けた多元宇宙移動という物語だったのですが、伏線を張ってからの回収がちょっと早かったかな? とも感じました。
裕也君が居た時空と、移動先の時空での原爆ドームの有無が伏線となっていたのですが、その後での裕也君が知っている歴史への言及が早過ぎたかなぁ、という気も。もうちょっと引っ張ってもいいギミックだった様な……というか、これ一つで十分に短編としてのギミックとしては面白かったので、ネタバラシが早過ぎた感はありました。

記事の冒頭で盛大にネタバレしてますが、タイムトラベルと見せ掛けて多元宇宙的な宇宙間移動だった、というのがとても面白かったです。
ただ、その理屈の骨子になっていたM理論って多元宇宙を説明するものだったっけ? と、疑問符が出たので、今度ちょっと調べてみようと興味が。

最終的には、結局、何がテーマだったのか判らず仕舞いでした。
未来でのドタバタした話を描こうとしていたのかなぁ? と、思ったり。ぶっ飛んだキャラが、ぶっ飛んだ話を展開する様な。
そう言った、エンタメ狙いだったとしたら、何と言うか、展開されている物語の規模の割に、話の大きさが伝わって来なかった印象でした。

一つの宇宙規模の話だったのに、思ったより個対個の争いで完結していたかしらん?

キャラをもっと濃くさせる(背景設定は十分濃い)か、叙述トリック的に裕也をタイムトラベラーと見せ掛けた部分を軸に、話を二転三転させるギミックとか欲しかった気がして、少し物語の設定に対して、内容に物足りなさがありました。もっと判り易いド派手な展開でも良かった気も。

肝心の多元宇宙移動をした裕也君が割と空気だったので、巻き込まれ系主人公っぽい自発的な行動とか、決断がもっとあっても良かったかなー。

良く言えば王道で、悪く言えばベタ、という様な感じでした。

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暗黒定数式:Sophiya's Last Theorem 世界観と物語がミスマッチに感じた

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていたパスベルスさんの作品です。

『フェルマーの最終定理』をオマージュしたタイトル。ラストも、フェルマーの「余白が狭過ぎる」のパロディーかしらん?

前回の『λ ABSTRACTION』と同じく、λ抽象学院の女子生徒達のお話です。
ざっくりと話の流れを言うと、主人公であるアリスの寮室にあるサーバがサイバーテロの踏み台にされたっぽいから、同じ寮生であるソフィーヤ、古園井と犯人を突き止めよう、というものです。

そのサイバーテロは、量子コンピュータでは容易に突破出来るが、古典的なノイマン型コンピュータじゃ計算時間が掛かり過ぎて暗号解読が無理というRSA暗号に対して、量子コンピュータでも計算時間的に解読無理という事で普及しているというGGH暗号が突破されたというのが要点になっています。

で、まぁ犯人はソフィーヤなんですけどね?

前作とは違って、用語やガジェットの説明がきちんとされていたので、読み易かったです。
ただ、文章中で(最早これは俺の好みの問題だけど)半角英数字が出てくるのが、やっぱりリズムが悪く感じてしまいました。

アリスをちょうど『探偵役』の様にした一人称視点で物語は進みます。
その途中で、ソフィーヤを天才として持ち上げようしているけれども、そもそもλ抽象学院自体が、名門中の名門校という説明だった筈なので、何か暗号化方式の基本的な理論説明だけでは、今ひとつ凄さが伝わりませんでした。逆に、主人公のアリスがただ不勉強なだけでは? という印象に。
もっと別に天才度合が伝わる様なものを簡単に表現してしまっても良かったかも知れません。単純に学年トップの成績だとか、色んなアルゴリズムコンテストの受賞常連だとか、そんな感じで。

GGH暗号を突破したソフィーヤが暗号に詳しい事を描こうとしていたのかしらん……?

SFとしては、近未来を描いているというよりも、現代の視点で未来を説明している感じになっているのが多少気になったところです。
量子コンピュータの市販化による情報工学技術の歴史的な変遷の設定が余り詰められていない様に感じられました。
もしくは、量子コンピュータ自体は市販されているけれども、まだ一般には普及していないとか、技術的にまだ過去のものが十二分に実用に耐えている理由が欲しかったところ(何しろ時代設定が『2045年』な訳だし)。
っていうか、ムーアの法則的には2045年のCPUって、まだ256bitぐらいだっけ……?

全体的に、作品から読み取れる世界観設定に対して、SF的な仮想科学感が物足りなく感じました。
暗号化の対象となる通信情報にしても、量子コンピュータの実用化がされている時代で、量子通信について言及されないで、TCPだけの話になっているのも気になります。
読んでいて、無理に近未来の時代背景を設定する必要は無かったんじゃないかなぁ、とか思ってしまいました。寧ろ、近未来になっているせいで、作中の世界観の技術が余り現代と変わらないのが物凄く違和感として残ってしまったところ。

情報工学系女子の日常としては、とても面白いし、キャラ付けもしっかりされているので、普通に現代を舞台にした最先端の特殊な情報工学専門学校とかでも良かった様な気もします。

あと、全体的に技術説明がwikiでも読んでいるかの様で冗長でした。もっと簡易的ですっきりした説明でも良かった気が。TCPパケット構造上の制御フラグの説明とか、丸々要らなかった気がします。
CUI系の操作の描写も、一々詳細を説明しないで、やる事だけを描写した方が読み易かった様に思います。説明の為に話が中断されるので、読んでいる側としてはテンポが悪く感じてしまいました。

最終的に、暗号化による完璧な秘匿通信の不可能性への言及がされていて、インターネットの通信を完全にオープン化すべきと言う思想について、ソフィーヤが話すのは面白かったです。
ただ、そこに至るまでの論点が技術的な視野しか無く、社会的影響を鑑みていないのが、狭窄的で気になりました。何故、ソフィーヤがそんな事を思い付いたのか、全く説明されないまま突然に犯行動機を話したので、もう少しその辺も描写して欲しかった。

アリスが、犯人がソフィーヤである事を理詰めしていく描写も不要だった様にも思います。
ミステリで言うとフーダニット的にしていたけれども、物語の性質的にはホワイダニットにすべきだったと思いました。その方が、動機についての掘り下げも出来ただろうし、ソフィーヤの動機の突然さも無くす事が出来たと思います。

あと、ソフィーヤがどう考えても発信地が露呈する様な方法で犯行を実行したのが謎でした。
本気だったなら、それこそネカフェなり何なりの公共施設から同時多発的に仕掛ける事も出来ただろうし、天才と説明されているキャラの割には少々お粗末な気も。
その辺で、ソフィーヤが犯行を本気で行っているのか否かが、よく判らない感じになっていました。

ソフィーヤとアリスの視点をザッピングさせて描写する、とかでも良かった様な気もします。
犯人と探偵役、みたいな感じで互いの心境を語らせながら話を進めれば、二人の仲についても、もっと語れたんじゃないかなぁ、と勿体無く思う。
前述する犯行動機についても、ソフィーヤは「アリスだから」という理由で話していますし、二人の仲の良さについて人間関係をこの作品単体で読み取れなかったのが残念。

全体的に作中で語られていないバックグラウンドが多そうだったので、専門用語の説明をもっと簡便にして省いて、そこに注力して欲しかったです。
あと百合っぽさがね、もうちょっとね、露骨にあざとくても良かった様な気もする。

それと、古園井ちゃん空気過ぎるよ……。

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暗黒定数式:λ ABSTRACTION いわゆる、エンタメ系?

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていたパスベルスさんの作品です。

近未来を時代背景としたλ抽象学院という工学系の女子高に入学する女の子達の話です。

全体的に、何を描きたかったのか、今一つ解りませんでした。
『情報工学系女子の日常小説』的なものを書きたかったのかなぁ……?

初っ端で、何かのメモ書きの様なものがあり、それが2045年を示唆していた様なので、『2045年問題』ものかな? と思いました。
『2045年問題』で一番最初に誕生した技術的特異点の人工知能の話なのかなー、とか思ったり。全然関係無かったけど。
多分、小ネタ的に仕込んでみたのかな……。

そしていきなりかっ飛ばしの専門用語の英文字列。
正直、ルビなり何なりで読む側に日本語で伝わる様にしても良かったのではないかと思ったり、あと英単語で表記する必要があるのかそこ?(Schemeとか) というところがあり、読み始めから文章のリズムが悪く感じて、ちょっと入り難かったです。

知識が無い人にも伝わる様にしなければ、小説としてのガジェットはまるで意味を成さないガラクタになってしまう様な気がするので、ちょっとどうかなぁ……とか思ったり。然して本編に関係無い要素だったり、意味の解る人にだけ伝われ! 的なコンセプトなのかしらん?

表現の手法としては手記的? ……と言うよりも、全体的に描写が淡白過ぎる感じでした。
主人公の古園井ちゃんの感情表現が、一人称視点の割には、ただ羅列されただけの様になっていて、何となく機械的に思えました。キャラ付けの為の淡泊な文章だとしても叙述的過ぎて、キャラクターとしての抒情さが余り感じられませんでした。
小学生の頃から情報工学にド嵌りしていて内気な子というキャラクター性だと思うのですが、事実だけしか書かれていない様な地の文だったので、もう少し描写を増やしてほしかったところ。

λ抽象学院への受験時も、面接を受けている時のガチガチに緊張している感が、一人称なのに何処か三人称的な気がしたので、何処かちぐはぐな印象。
そして面接後に面接官が突然に受験生を送るという展開には無理がある……古園井ちゃんが特別な生徒だったりするなら解るが……

全体的に描写が甘かった様な気がしました。読んでいる側に伝えるべき情報が書かれていないせいで、情景がイメージし難い……面接官の先生二人の性別も、名前から連想出来る程でもなく、かと言って容姿と口調から解るのかと言われても微妙だったりと、色々とつっかえながらの読み進めに。もう少し、地の文での明確な情報量を増やしてほしかったです。

あと、クラス分けの組名にギリシャ文字が使われているのですが、これを表記に使う理由が特に無くて、これまた日常的には見慣れない文字なので、文章のリズムが悪くなっている一因に感じました。

同級生デリアや、他のクラスメイトの登場シーンは流れは自然で、日常の出会いの中で仲良くなっていく感じが、学園ものという何と言うか、青春というか百合? 的に良かったのですが、キャットだけが物凄く唐突に現れた様な感じに見えました。
クラス分け表の場面で登場させずに、教室での自己紹介シーンで印象付けた方が良かったのではないのかなぁ……

うーむ。全体的には、やっぱり描写が不足していて衒学的な内容に感じました。

寮の組み分けについての説明も冗長になっただけに感じたり、他の情報工学系のキーワードに対して何故かLANとWANの説明はきちんと入ったりして、説明が為される要素に疑問符が付いたり。

あと、量子コンピュータが十二分に(RSA暗号突破出来るレベルで)実用化されている時代背景なら、既存のプログラミング言語淘汰されてね……?

技術的にインフラシステムの入れ替えの関係上とかで、中々まだまだ生き残っているとかならまだしも(銀行系システムとかのCOBOLみたいに)、特に説明もなくノイマン型コンピュータの言語が生き残っているのが割と謎……。

あと、個人情報の扱いが、インターネットが普及してかなり手軽にLAN内で色々な情報が(多分SNS的に)扱える様になっている上に、スーパーグローバルな日本学校として説明されている割には、留学生達のプロフィールデータとかが日本語表記じゃなくて、母国語だったりしたのが不自然な感じに。

留学生が多い事に関する説明にしても、外国人という理由だけで優遇される、というのが何か違和感が残りました。工学系女学生を育成する学校なのに、外国人だというだけで授業料免除とはこれ如何に。
外国人のキャラを沢山出したかったのであれば、もっとλ抽象学院そのものを、世界有数の名門校にしてしまった方が良かった様な気も……。

全体としては、日常系の第一話部分のみ、という感じで、キャラクター紹介を行っただけの様な話だったので、短編として完結させるのならば、最初から学校生活を描いてしまった方が面白くなったんじゃないかなぁ、と。

キャラクター達も、それぞれ人種・国籍が違ったり、好んでいるプログラミング言語等を個別に設定していて、割と濃い目になっているので、それをもっと単純娯楽的に纏めた方が良かった様な気がしました。
情報工学の知識として描く部分の濃淡をはっきりとさせて、キャラの掛け合いとかの中に、しれっと濃厚な話をぶち込んだり……? 情報工学の話も解る人にしか解らないという感じになっていた(勿論、俺は全然解っていない)ので、もっと比喩的な表現を盛り込んだりして、知識の無い人にも伝わる様な工夫が欲しかったです。

何と言うか……芳文社とかの萌え4コマ漫画的な、感じに……いや何か語弊がある様な

どうやらパスベルスさんは、同誌にもう一作の短編を、同じ世界観で書かれている様なので、そっち側との繋がりも気になるところです。

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ヘヴンズ・コンストラクター まだファンタジー

なろうコン受賞作・高山理図さんの作品。

医療技術によって人類の不老長寿が可能となった世界で、その人口増加に対する方法として移住用の仮想現実アガルタを作る構築士という仕事の物語。

最初、アガルタの構築理由についてが、医療技術の進歩による人口爆発とそれに付随する精神福祉の為、としか説明されなかったので、疑問符が。
そもそも仮想"死後"世界という説明だったので、人口爆発に対する根本的な解決の関連性が読み取り難かったです。
多分、死が無くなった事で、長過ぎる生を精神的に充足させる為の空間、という意味で『仮想死後』世界、つまり仮死的な状態での世界構築という意味? 或いは単純に肉体を捨てて、デジタルでの生を選択する事が可能になったという事でしょうか。

アガルタを一から構築しなければならない理由についても特に言及されていなかったので、その辺の理由が気になるところ。

何にしろ、この世界では人口爆発への物理的な抜本解決をどう模索しているのかなー、とか。

仮想世界での様子は、着々と困難を乗り越えていく主人公・赤井と、それに伴う文明発展の様子が、語弊があるかも知れないけれど、ゲーム的なレベルアップの様で成長がはっきり見えて面白い。
ただ、文明開化に対して、視覚的な描写が少なく感じたのと、あと高山さん自身が造詣の深いバイオ系の描写はちょっと冗長に感じてしまいました。もう少し、化学式周りやらはすっきりとさせた文章でも良かったのかな、と。

あと、赤井も含めて、他の構築士達もそうなのだろうけど、自分だけが不老不死の『神』を演じていて、仮想世界の始祖となる人間とのコミュニケーションを取り続ける様は、アガペーと言えば聞こえはいいけれど、されど元は人間。精神構造としては、明らかに怪訝しい。だからこその『神』なのだろうけれども、赤井は最初から自分の事を考えていない。あらゆる意味で、形で自己犠牲的。それはもう人間としては愛なんて言葉ではなくて狂気。完全に狂ってる。

アガルタというシステム運用の方針的に発狂する神が居やしないのかというのが気になるところ。もしくは、そう言うのを見定める為の例の『試用期間』があったのかしらん? 何にしろ、ホモ・サピエンスにしては赤井キモイ。語呂が良いからもう一回言うけど赤井キモイ。あ、メグは可愛いです。

ロイの独白のシーンで、人工知能と呼ぶには、余りにも素民(仮想世界の始祖となる人間)はプログラムを超えているのが気になった。哲学的ゾンビどころか、自我を備えて『心』を理解している。況してや心の疲弊という概念を理解しているのには驚き。この辺には何かまだアガルタ・システム上での明かされていない事情があるのか気になるところ。

まぁ、もしくはロイだけがズバ抜けて賢いだけで、或いはロイとメグだけが特例となる何か(キリスト教的な使徒の様な)でもあるのかな?
っていうかロイ、頭良すぎ怖い。何だお前技術的特異点か。って思っていたらメグ、お前もか。ロイ程じゃないけど、お前もか。

グランダ城塞辺りは、赤井の逆襲というか逆転劇がすっきりと描かれていて痛快な反面、兵士達の徒労が、赤井の神の力の見せ付けから一周回ってちょっとシュール……ジェロム隊長の印象が完全にギャグ調でインパクト凄い。今後も登場してオチ役っぽい感じになっちゃうんじゃないかってぐらい。

・スオウちゃん不憫可愛い。

スオウ周りのところは、ロイとメグ同様に独白シーンを設けた方が良かったのかなぁ、と。一二〇年分の重みある歴史の呪縛の割にはあっさりと、解放された様に思えてしまったので、あと不憫っぷりから言って絶対そっちの方が良い(何がと言わんが)。

対ブリリアント戦は、何処と無くTRPGのGMとPLっぽさがあって何処か笑えた。八百長で、きちんとした手順を踏めばクリア出来るのだけれど、ミスるとゲームオーバー的なところとか。
緊張と弛緩があるので、さくさくっと読めました。

っていうかもんじゃもんじゃ煩ぇぞ赤井。

今後の展開として、文明として技術水準が上がれば上がる程、住民の信頼というものを維持するには『神』の立ち位置の確保が難しくなるのがどうなるのかという点(さらっと構築士とは別に維持士という存在には触れられていたけれども)と、人工知能としては人間と遜色無い素民達の扱いをどうするのかが気になるところ。

技術水準が上がって科学も発展すれば、それだけで精神面でも心の哲学の発達がある訳なので、現実世界への疑問や、自己存在への言及を素民達が始めちゃったらどうするんだろうなー、とか。
あと、根本的に神という存在が仮想現実的な視点からすれば物質的に存在しているので、それがアガルタの構築への影響・運用・保守面で、素民達との最終的な対立を生み出してやしまわないかとかが気になりますね。

現時点では、ファンタジー寄りの物語展開だったものが、今後はサイバーパンク的にシフトしていくというので、その辺の諸々に言及の仕方が楽しみです。

でもやっぱり赤井の精神構造キモいって絶対。

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暗黒定数式:ふたりのハードプロブレム 主題の揺らぎが勿体無い

暗黒定数式』のオムニバス集に収録されていた南正太郎さんの作品です。

アンドロイドが実用段階にある近未来もので、主人公の希海が記憶喪失のアンドロイドの少女と出会い、物語が展開されるというお話。多分、ジャンル的には百合成分も配合。

序盤、一人称視点でのキャラクター付けでも無いのに、妙に物理法則で然程重要でも複雑でもない描写をしているのがちょっと気になって、入り込み難かったです。
物語上で必要な科学的な作用同士のぶつかり合い(例えば技術物とか)とか、視点主のキャラクターの性格から来るなら解るけれども、突然の物理法則の説明はちょっと冗長に感じてしまいました。

ガジェットとしては、限り無く人間に近いアンドロイドと、タイトルでも意識されているであろう『意識のハード・プロブレム』が据えられています。

全体的な感想としては、アイデアが上手く混ざり合っていない印象でした。

一番最初に、主人公である希海が記憶喪失のアンドロイドの少女・ハルカ(後にリコに改名)と出会うのですが、その辺の事情について色々と疑問点が。

作中に登場するアンドロイドは、人工知能としての精神構造を量子もつれを利用しているという事で、その量子状態の安定化の為に冷媒が必要、というものです。
ただ、ここで思ったのがアンドロイドの少女が幾ら実証機の意味合いが強いとは説明されていても、記憶媒体のバックアップ機構は作られているべきなのかなぁ、と。普通なら情報としての重要性から、冗長化されて然るべき部分なので、且つ量子もつれの安定化が内部で恒常化されていないのであれば、殊更に。一度異常系シーケンスが走ったら復旧不可能というのはちょっと気になってしまいました。
まあ、この辺はあとから物語に関わるのかしらん?

記憶を失って彷徨っていたリコを、希海は何やかんやで取り敢えず自分の家に連れ帰って、その後に製造会社の東という男が当然ながら探しに来るのですが、その後にリコ(ハルカ)についての事情を事細かに説明し始めたが不自然に感じたのですが、何か逆に東が胡散臭過ぎてもう少し何かしらの事情があるのかなぁ、と。

アンドロイドの運用方法・社会的な影響についても、地の文での企業側の倫理規定に関する説明がされたのですが、法律が整えられて然るべきだし、企業側もそれなりの犯罪利用への防止措置を取るべきものだと思うので、設定に詰めの甘さが感じられました。
個体製造番号での管理や、企業側でデータベース化して機体毎の状態を把握出来ていない状態があるというのは何かとても気になった……余り本筋には関係なさそうでしたし、物語の核心に絶対必要という風には感じなかったので、さらっと流す程度で良かったのかなぁ……この辺りの設定がそこまで作り込まれていない様に感じたので。

しかし元々、廃棄が決定していた商品であるリコ(ハルカ)を、一社員の独断で希海に渡す理由が解らない……余りにも矛盾している気がしてしまいました。そもそも、廃棄されたとは言え、しかも記憶の復旧の可能性にまで言及しているのならば、それこそ前述の倫理規定に引っ掛かって廃棄されるべきになるのでは……いっその事、貴重なケースの研究・検査としてハルカと自然な生活をして欲しいという方が良かったのですが(作中ではあとで口裏合わせという理由でそんな感じの言い訳にしていましたが、普通にそっちの理由で東に語らせている方が自然に感じられたと思う)、流れを誘導している東に何か狙いがあるかどうかが気になるところ。
情だけでは余りにも理由が弱いし、そこまでアンドロイドに対して思い入れがある程の人間性がこの時点で東には見えないって事でやべぇ東の胡散臭さ半端ねぇ

希海がリコを引き取る事に決めた後の日常シーンは、大体、「オッケーなんかもうイチャついてろよお前ら!!」って感じで百合百合(日本語になっていない)。

あとのシーンでリコの定期メンテって事で、企業側に訪れるのですが、そこで突然現れたルーミングというガジェット。
簡単に言うと、自分の精神の中に引き籠って現実に戻ってこない患者に対して、相手の精神の中に潜って連れ戻す、というもの。

ちょっと、ここが突然過ぎて吃驚しました。希海が専門家の代わりに処置を施すという流れはちょっと無理があるかなぁ……免許を持っているからと言って、企業的に部外者に処置を許す訳が無いし、剰え学生でしかも本職じゃない相手の言い出した事を許可していいものなのだろうか……。

あと、SFとしてはルーミングの免許の更新制度とかまで言及して掘り下げると、希海のメンタル設定背景的に免許失効していないのかが割と謎です。

台風で専門家の医師が遅れているというのも、理由付けにはちょっと弱く感じました。緊急に処置が必要だったなら、台風を予測して企業として何らかの対策を立てているべきだし、症例としてニューロワーム感染が普通にあり得る事なら(東の反応からすると普通っぽい?)常駐している専門家がいる筈……もしくは、処置方法が人間と同じなら、そもそも企業に運ばずに専門の病院に運ぶべきなのではないのかなぁ? と違和感を感じてしまいました。

それと、ルーミングでいきなり精神空間でのバトルがさらりと始まったりして、何か色々詰め込み過ぎな気がしました。タイトルに対して描かれている内容が、テーマと結び付き難いし、迂遠過ぎる。
今のところ、前編だけを読んだ感じでは、『意識のハード・プロブレム』をテーマの中核に据えつつ、単純に人×アンドロイドの百合SFにするか、ルーミングだけのどちらかに絞るべきだけだったかなという感じ。
個々のアイデアとしては面白いし、読んでいて色々と書こうとしているものがあるのは伝わってきたので、問題としては物語全体でのアイデアを埋め込む配分が悪かった印象。

後編でリコがニューロワームに感染しちゃったりする展開への布石かしらん?


そこで希海がリコにルーミングしたら完全にイケメンだな。って言うか作中通して全体的に結構メンタル強いじゃねぇかお前!!

こちらも前後編に別れているとは思わなかったので、後編待ちです。

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